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tatsuya marukawa archives.


天使の眠り方


その1
 グズ子編

天使の眠り方


その2
 チビ子編

チビ子


たった3行の手紙。

たった3行の手紙

僕の財布の中には、お金はないけど、大事なものが入っていて、いつも肌身離さず持ち歩いている。そのひとつが、東京へ出てきたすぐくらいの時にもらった、僕のこれまでの人生でたった一度だけの、父親からの手紙。正確には、メモ書きだが、僕にとっては、唯一の父からの手紙だ。ゴルフ好きな父は、ハンディキャップ6のなかなかの腕前。そんな父らしく、手紙は、ゴルフコンペのメンバーリストを破いた、その切れ端の裏に書いてある。父は小学校しか出ていない。B-29が空を舞い、通り道にしか過ぎないはずの、過疎地である松阪の上空から、暇つぶしに数発の弾を打ち下ろす米軍と、その弾から必死で逃げる人々。勉強よりも畑仕事に駆り出された子供時代。そういう時代の人だ。つたない字で書かれた、たった3行の手紙。
「借金をするな、元気で働け、○○(僕の奥さんの名前)をだいじに、仲よく」。
父の仕事を継がないと告げて東京へ出る未熟者な僕への、父なりのエールだと思う。
これが、僕の宝物だ。

父は瓦職人。すでに引退して、看板は下ろしているが、職人としての腕は間違いなく一級品だったと思う。父の作る瓦屋根は美しかった。納期や予算などが関係なければ、父は間違いなく、芸術作品に匹敵する屋根を作れたろう。僕もしばらく手元で手伝いをしたが、とても真似のできるレベルではない。同業者でさえ、父が瓦を葺き始めると、作業の手を止めて、見入っていたくらいだ。わざわざ、屋根の下から、そのためだけに上がって見にくる人もいたのだから。驚くのは、その早さと正確さ。小学校しか出ていない父の脳の中で、それでも、それに特化したスーパーコンピューターが稼動していたに違いない。実際、県の技能大会では何度も優勝している。長年、技術を継承していこうと試みてはきたが、それを会得できる若者がいない。それくらい、父の技術は飛びぬけていた。

ものづくりの楽しさと、職人が担う伝統の重みを、僕は父親から教わった。言葉などは一切ないが、グローブのような父の手を見れば、語らずともわかる。職人の手は、なんとも美しいのだ。家では頑固者のわからず屋な父親だが、人間の優しい、ものすごくチャーミングな人であろうと思う。父の作る屋根を見れば、彼がアーティストだと僕が言っても、誰も否定はできないはずだ。それくらい、僕は父の作る屋根が好きだった。阪神淡路大震災以降、瓦屋根は極端に減った。当然、瓦職人も激変していった。もう、そういう時代ではないのだ。それでも、現在、73歳になる父のもとには、今でも時々、昔からのお客さんが、屋根を直してくれと頼みに来る。台風が来ると、父は今でも真っ先に、昔からのお客さん達の屋根の心配をする。数年前、実家へ帰省中に、台風で飛んでしまった屋根を直すという父の仕事に久しぶりにお供した時、施主さん(お客さん)に言われた。
「やっぱりおたくとこやないとあかん。あの人しかできひん。」
その言葉を、なぜか僕は父親には伝えなかったが、僕は一生、忘れることはないと思う。

もしも家を建てるとき、瓦屋根を希望しているならば、彼に相談されるといいと思います。間違いなく、どこよりもかっこいい屋根ができるはずですから。

生まれ変わっても、またこの父親の子供に生まれてきたいと思う。そして今度こそは、彼の「技」を継承してみたい。「お前には無理や。センスがないわ、お前には。」って、また言われてしまいそうだけど。


ラララで、行こか。

ラララで、行こか。

今思うこと。ないものねだりをしないこと。今のままでいいし、今のままがいいと思う。今までは自分にないものばかりを求めてきた。店舗数を増やすだとか、広い庭の家に住みたいだとか。そんなことよりも、自分が本当にやりたいことをして暮らしていけるだけの範囲で十分だし、それ以外のイザコザやなんかに振り回される時間がもったいないと思えてきた。今年の正月は、毎年恒例だった「欲しいもの・叶えたいものリスト」作りもやめた。必要なものは向こうからやってくる。今あるものが宝物。そんなことを言うと「向上心」はないのか、と言われてしまいそうだが、僕にとっては、これ、すごい向上心なんですけど。おかげでずいぶん楽になった。これまでに起きたこと、今起きていること、これから起こること。悪い出来事に思えることもきっと、全てが予定通り。気持ちを軽くして、ラララで生きていければ、それでいい。そのついでに、体重も軽くなれば、もっといい、んだけど。でもまあ、今こうして生きていて、楽しいと思えることができているんだから、どんなにがんばったって、ジャニーズにはなれないんだから、ないものねだりはやっぱりダメです。なにわともあれ、生まれてきたこと、産んでくれたことにありがとうだな。お父さん、お母さん、ありがとさん。


大ちゃんの農業修行。

大ちゃんの農業修行

坊主頭でメガネで普段から着物で過ごす小堀君。ここでは愛情を込めて下の名前で「大ちゃん」と呼ぶことにします。大ちゃんは現在33歳で千葉県在住。彼はこれから1年間、三重県の名張市で農業修行を始めます。彼が農業や野菜に興味を持ったのは意外にも「犬」でした。彼は以前、ペットショップに勤めていて、ある日、そこのペットショップで買われていった1匹のチワワを、購入者である飼い主の事情で返したいとの申し出があったとのこと。困ったことだと思い考え、大ちゃんが引き取って育てることになりました。そのチワワは先天的に体がそんなに丈夫ではなかったようで、大ちゃん自身、すごく不安だったことでしょう。大ちゃんはペットショップで教えられたとおり、ドックフードのみを与えました。それ以外は与えず、ドックフードのみです。それだからなのか何なのか、それからしばらくすると、そのチワワが時々痙攣を起すようになりました。いくつもの動物病院を回り、何とか原因と対策を探しました。そして気づいたこと、それは「食」の問題でした。ドックフードは手軽だけれど、その中に含まれているものは決して体にやさしいものばかりではありません。ジャンクフードだと言い切る人さえいるくらいです。大ちゃんはいろいろ勉強して、犬の食事を自分で作るようにしました。無農薬の野菜を取り寄せ、毎日毎日、工夫しながら続けたところ、見事に体調がよくなり、もう痙攣を起さないようになりました。そのチワワは今でも元気に過ごしています。その時大ちゃんは、食の大切さや威力を痛烈に思い知らされました。それからは、犬の食事だけでなく、食そのものへと興味は広がっていきます。そして今回の農業修行。1年間の修行のあとは、千葉へ戻り、そこで学んだことを多くの人に伝えていきたいと語ります。

ブログという媒体ゆえに、ずいぶんと急ぎ足で説明したので、かなり言葉足らずで申し訳ないのですが、おおまかな彼の紹介はそんな感じ。今日、彼の目を見ながら彼の話を聞いているとき、僕は「なんてキレイな目をしている人なんだろう。」と考えていました。細身のその体からは、屈託のない優しさが窮屈そうに溢れています。彼が僕のお店にいたその時間、そこには間違いなく、いい空気が流れ、満たされているのを感じました。彼の作った野菜を僕はまだ食べていませんが、彼の作る野菜やお米は、間違いなくおいしいはずです。この人の作るものを食べてみたい、素直にそう思うのです。彼の目があまりにも透明で、思わず目をそらしてしまいそうになりましたが、がんばって見つめました。彼の目から、僕の目はどんな風に見えたでしょう。いやいや、あんなにキレイな目をした人は、そんなことすら考えないのでしょう。

ある本の中で、「どんなにいいことを言っていても、どんなに成功したとしても、一番身近な人たちに優しくできないのなら、そんな人生はクズだ。」とありました。彼から溢れるその優しさは、目の前の人さえも優しくさせてくれる。彼の目を見ていると、優しくなれる気がしてくる。彼の作る食物は、間違いなく、優しいんだろうな。慌てて奥さんに聞いてみる。俺は優しくできているか?と。優しいよ、と言ってくれるその優しさには、やっぱりかなわない。

大ちゃんとは長く付き合えそうだ。大ちゃんと友達になれて僕はとても嬉しい。
大ちゃん、これからもよろしくね。


私は、偽者。

ディア・ドクター

今日観たDVDの中で、「ディア・ドクター」の原作・脚本・監督の西川美和さんの言葉が耳に残る。彼女は自らを「偽者」と言い切った。こんな偽者の自分が幸運にも監督などをさせていただけた。だがそれによって、周りからは本物のように見られてしまった。はて困ったことだが、そんな苦悩の中で、それでも、自らも、周りが求める本当の本物へと近づいていきたいと日々奮闘している、と。その思いを書き起こした物語が「ディア・ドクター」だ。素人の僕から見ても、彼女の才能はまぶしいほどの「本物」に見えるのだが。

僕は、といえば、それは間違いなく、正真正銘の本物の偽者だ。それでも、偽者だからこそ、本物を目指そうと気張る。踏ん張る。本物を目指せるのは偽者の特権だ。本日、東京・神楽坂のフラスコさんで始まった日野明子さんの「ごはんのうつわ屋」にも行ってきた。日野さんと僕のいつもの合言葉は、「生まれ変わったら、今度こそは職人になろうね。」だ。日野さんも僕も、お互い、職人技を伝え広める道を歩むが、本心を語れるならば、職人という道を歩んでみたかった。でも、やはり職人の道は険しい。ならば、職人の生み出す見事な技を、どの職人よりも上手に伝えてみせようぜ!という道を、僕らは選んだのだ。といっても、僕はまだ、その道ですら偽者のまんまだが、日野姉さんはとっくに本物なんだけどね。
僕の行く道は、果てしなく、ほど遠い。

誰かさんが言うように、本当に来世というものがあるならば、日野姉さんはきっと長年の夢を叶えて見事に職人の道を勝ち取って、そんなかっちょいい職人な日野姉さんに僕は弟子入りして、僕だって、生き死にをも超えた、念願だった夢を叶えるんだ。で、そんなにも長く想い続けた夢が、それは単に、スタートラインに立っただけに過ぎないってことを思い知って、やっぱりいつの世も、僕の行く道は果てしなく、ほど遠く、きっと来世こそは!と、あいもかわらず、見事な偽者っぷりを発揮するのでしょう。


君の願いはちゃんと叶うよ

BUMP OF CHICKEN / 魔法の料理 ~君から君へ~

 


ごはんのうつわ屋

ごはんのうつわ屋

いつも丸川商店を気にかけていただく優しい姉さん、日野明子さん。日野さんの著書「うつわの手帖」の第2弾の出版を記念した展示販売展「ごはんのうつわ屋」が、東京・神楽坂のフラスコにて開催されますのでお知らせします。うつわ好きなら迷う理由はありません。僕も必ず行きます。あ~、いくらほど持ってれば、右から左へ全部買い占めることが出来るんだろう。それくらい楽しみです!

 

▼ごはんのうつわ屋
http://frascokagurazaka.com/thisweek2010/105-gohan.html


不況とは、夢を語れぬ時代。

全力疾走!

あいもかわらず世の中は不況の渦の中。終わりそうで終わらない、グダグダな映画のエンディングのような嫌な気分。経済的な不況は数字を見れば明らかだが、不況ってやつは、人に夢を語らせることも妨げる。最近、色んな人と話しても、ほとんどの人が夢を語ろうとしない。僕がのん気に夢でも語ったならば、うちは不況しらずで大儲けしている、と勘違いされる始末。とんでもない。経理からは毎日口癖のように「社長、このままだと給料払えませんが、どうするんですか?」というエール(?)をもらっている。僕はやっぱりのん気だから、「何とかなるでしょう。何とかなるさ。」なんて調子なだけで、それが人には絶好調と見えるらしい。でもね、夢ぐらい語りたいわけです。別に叶わなくたっていいから、少なくとも僕は誰かが言った夢が実現しなかったからって非難したりしないから、大いに夢を語ってほしいなと思うんだけど、誰も語らない。ホラ吹きって思われるのが怖いのか、出来ない約束は出来ません、ってやつなのか、そりゃあ意味はわかるけど、ちょっと寂しすぎやしませんか。だから僕はこれからも、あいもかわらず夢を語っていきたいと思います。そしてそれは、決して儲かっているわけではないことも覚えておいてくださいね。何とかなるさ、と信じていますが、何ともならなかった時は、潔くゲームオーバーです!

いつ何時、何がどうなっても後悔しないように、今を全力で生きる!好きなことを全部したいから、人生はいつも時間足らず。それでも僕は、心の向くほうへ、全力疾走なのです!


青木浩二 陶展

青木浩二 陶展

4月10日より、親しくさせていただいております青木浩二さんの陶展が開催されますのでお知らせします。青木さんの作品は、手びねりならではの温もりと繊細で美しいフォルムが特徴。複雑に調合された独特な色づかいは、見ているだけで癒されます。さらにその器を手にとれば、作者である青木さんのお人柄や器に対する深い愛情が心に伝わってきて、ものすごく幸せな気持ちになるから不思議。その場で購入もできますので、ぜひぜひ。

 

▼青木浩二 陶展 (studio bacca)
http://www.geocities.jp/studiobacca/

日時 : 2010年4月10日(土)~18日(日) ※14日(水)はお休み
時間 : 10:00~18:00 ※青木さんは常時在廊されています。
場所 : 鎌倉市極楽寺2丁目 (江ノ電極楽寺駅下車 徒歩3分)


出発地展

tabijitaku

今日は友人の引越しのお手伝い。その帰りにギャラリー「深川番所」さんで「出発地展 tabijitaku」という展示を見てきました。木下桃子さん、梶川和恵さん、村上奈穂さんの3人合同での展示で、それぞれが異なる分野でありながら「旅」という共通のテーマによって構成されていて、見ているだけで元気になれるような、そんな展示でした。そしてなにより、若い方達がモノづくりに取り組んでおられる姿は、僕などはそれだけで応援したくなります。テントまで作ってしまう木下さん、糸染めから手織りの機織までこなす梶川さん、かわいい靴もかっこいい靴も見事に仕立てる村上さん。作るモノこそ違えど「モノづくり」という共通言語で通じ合う。彼女達はみな楽しそうで、これからもずっと、そうであってほしいと願っています。

さあさあ、僕も負けていられません。・・・が、引越しの手伝いで、ちょっと腰が・・・。

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